第四章-後編-



はっと目を開いた。

次の瞬間、メンバー達を捕らえていた影が消滅し、拘束が解けたのだ。何のつもりだ、とばかりにクレシスは鋭く睨みつける。

「……あーあ」

一方のダークリンクは口角を吊り上げ、不適に笑って。

「ま、自業自得ってやつだな。……そんじゃ、」

漂う不穏な空気に警戒して後退した、その時。ぶわっ、と下から強い風が吹き抜け、クレシスは自身を腕で庇うようにして怯んだ。風が止み、ゆっくりと腕を退けるとそこは全てが黒塗りの世界。クレシスはゆっくりと辺りを見回して。

「とりあえず一人、殺っとくか」

声を頼りに構えを取る。が、それは遅すぎる反応だった。


「っ、あ」


不意に唇からこぼれ落ちる、小さな声。

誰だろう。息遣いが聞こえる。吸い取られるように力が抜けて、腹部に激痛が走った。ゆっくりと視線を落としても尚、何が起こったのか分からずにいて。

「――いいこと教えといてやる」

間もなくして、暗闇に光が差した。クレシスは目を開く。

「か、っは」


赤黒くて。生温かくて。でも、多分。


これは、こいつのじゃない。


「俺はな」

ダークリンクはずずっと剣を奥まで突いて、囁く。

「あんたらとお揃い。――人間なんだよ」
 
 
6/82ページ
スキ