第四章-後編-
「……?」
ぱちぱちと何かが弾けるような音が、まるで迫るようにだんだんと大きくなっていく。その原因が目の前のクレシスにあると知ると、ダークリンクは目を見張って。
次の瞬間、クレシスは剣を手放すとその場で身を屈め、潜るようにしてダークリンクの懐へ。腹部に両手を翳し、手のひらから電撃を放出する。
「ッが!」
怯む隙さえも与えず、続けて手放した剣が落ちる前に後ろ手で柄を掴み、それを逆手に持ち直す。その間距離は変わらないまま、剣を手にした腕を振り上げるようにして、柄でダークリンクの顎を強打。首を反らして己が視界から外れれば、次は腹部に向かって強烈な回し蹴りをお見舞いする。
「ぐ、っ、……」
ダークリンクが攻撃を読み切れなかったのは、クレシスが体内の電気を使って自身の筋肉を自在に伸縮させ、動きを倍速に跳ね上げていたからである。
とはいえ、それがノーリスクというわけにもいかない。実際、クレシスもその場に跪き、息を弾ませるほどに疲労は激しかった。これに関してはどうしても自身の進化の段階に依存してしまうのがどうしようもない、悔やむ点だ。
「っは……化け物だな、それ」
対するダークリンクは何度か床を跳ねて転がった後、倒れていたが、不意ににやりと笑うとそう呟いて。ゆっくりと体を起こす彼を見つめ、クレシスは立ち上がる。
「てめえほどじゃねえよ。チート野郎」
ダークリンクはその場に跪いたまま、床に剣を突き立てる。
「……ちっ」
俺としたことが、少しムキになりすぎたな。
意地を張る自分自身の癖に舌打ちをして、ダークリンクは立ち上がった。辺りに目を走らせて小さく息を吐き出し、床から剣を引き抜いて軽く振るう。