第四章-後編-
誰もがはっと息を呑んだ。
「っ……!」
突き出された剣の直撃は何とか躱したが、それでもクレシスの頬を掠め、赤い一筋の線を作り出して。次の一撃が来る前に薙ぎ払いを仕掛けると、ダークリンクは小さく舌打ち、後方に大きく飛び退いた。
「クレシス!」
「そう騒ぐなよ。少し掠めただけだ」
クレシスはふんと鼻を鳴らして、滲んだ血を手の甲でぐいと拭い去る。
平然としているようで、これでも扱いに困っているのだ。あれだけの人数を捕らえていれば限界もあるんじゃないかと踏んでいたが、これだ。あの能力は恐らく、彼自身の体力に依存するのだろう。……いや、それとも。
「ぼうっと突っ立ってんなよ!」
それとも、魔物特有の自己再生能力があるからと、能力に限界値がないのではないか。だとしたら、自分はとんでもない敵と応戦しているわけだ。
「っくく、こんな状況下で考え事か? 余裕じゃねえか」
再び詰め寄ったダークリンクの振り上げ、薙ぎ払いを連続して剣で防御、目前の突きを躱し、直後の振り下ろしを再び剣で受け止める。
「ほら、どうしたよ。息が上がってんぜ?」
ぎりぎりと押し合いながらダークリンクがにやりと笑えば、クレシスは顔を顰めた。ちらり、尻目で子供たちを視界に捉える。
奴の言うとおり、体力にも余裕がない。そこで棒立ちになっている子供たちの手を借りれるはずもないし、それよりは注意が此方に向いている隙にどうにかしてしまいたいところ。……ここで迷っている暇はない、か。