第四章-前編-
ダークリンクはただ立ち尽くしている。
走っている最中、ふと視線を落としてラディスは飛び退いた。ただの影だと思っていたそれは、ダークリンクの足下から伸び、直後に床から真っ直ぐ突き出して。
「ラディス!」
フォックスの呼びかけに、小さく頷いて応える。――成る程、影を自在に操る能力か。皆を捕まえているのも多分、あれだ。
「……へえ」
次の一撃も躱して、ラディスはダークリンクの周りで円を描くようにして距離を詰めていく。ダークリンクは目を細める。
「鼠風情が……ちょこまかと」
いよいよ、此方の物理攻撃が届く範囲にまで距離を縮めた。そのタイミングでダークリンクは剣を鞘から抜き、打ち払って。
「調子に、っ!」
もう目の前にまで迫ってきていたラディス目掛けて斬りかかったつもりが、鈍い金属音と共に受け止められていた。
「……やってくれるじゃねえか」
ダークリンクはそれまで目を開いていたが、種が分かったのか口角を吊り上げて。