第四章-前編-
いない。
「くっ……」
やっぱり、いない。
「皆っ!」
食堂の扉を開いたラディスは、その光景にはっと息を呑んだ。隣に並んだクレシスも、目を開いてぽつりと声を洩らす。
「……何だよ、これ」
椅子やテーブルは倒れ、所々に散らばったメンバーたちは黒い影のようなものに手や足を捕らわれ、身動きが取れなくなっている。――そしてその食堂の中心には。
「ゼルダ姫!」
紫色の結晶の中に閉じ込められたゼルダと、見覚えのある青年の姿が――
「……よお。久しぶりじゃねえか」
黒い衣服を纏った青年は、にやりと笑う。
「君は……」
ラディスは不意に目を凝らす。
「……誰だっけ?」
「お約束かよ!」
青年を除いた全員が一斉に突っ込んだ。