第四章-前編-
「だが、貴様はただ普通の人間だった」
ユウは腕を組んで。
「確かに死にたくなければ殺したくもないというのは、その立場において見事な矛盾だが、見たところただの我が儘でもない」
リンクは黙って見つめている。
「それが、私の安心したという点だ」
「ユウ!」
「……ただひとつだけ」
言いかけた、その時だった。
「きゃああぁあ!」
銃声と悲鳴が、廊下に響き渡った。
恐らく食堂からだ。真っ先に駆け出すユウを見て、ドンキーも慌てて追いかける。
「ちょっとぉ!」
ようやく解放されたリムだったが、ふと階段の上段で立ち尽くすリンクを見上げた。
茶色のグローブを黙って左手に嵌めるリンクを目にぶすっとして、リムは階段を駆け上がると、迷わずその腕を掴んで。
「……離してください」
「さっき、ユウが言いかけたことっ」
リンクは口を閉じる。
「あんたがどうしてDX部隊(ここ)に入ったのか、あたしもずっと考えてた」