第四章-前編-
恐怖を覚えた。
「せ……せやけど、それは」
「やっぱり」
ドンキーははっと目を開いて。
「そうですよね。選ばれたのは俺なんですから、勇者であるべきはこのリンク」
自嘲するように、くくっと喉を鳴らす。
「いつだってそう。好きなだけ褒めそやして、後は見ているだけ。ただの人間一人に希望だなんだと抱いて――いつも勝手で」
リンクは見下したような瞳で呟く。
「分かりませんか? 迷惑なんですよ」
三人は言葉を失っていた。
いや、ユウに限っては無表情のまま、ただ黙って見つめているだけだったが。
「――教えてあげましょうか?」
リンクは一段、階段を下りて。
「貴方たちが称えている勇者は……」
にやり、不適に笑って言い放つ。
「“人殺し”なんですよ」