第四章-前編-
「なんであんなこと言うのっ!」
リムはドンキーの腕の中でもがきながら、
「お姫様、凄く悲しそうにしてた!」
リンクは応えない。階段の上段に立ち尽くし、振り返って此方を見つめているだけ。
「あ、あんな言い方せんでええやん」
ドンキーはもがくリムを抑えながら、
「その、タライとホース?」
「トライフォース」
「そ、そうそう。そんな凄そうなもん持っとるなんて……俺、知らんかったわぁ」
リンクは黙っている。
「何も隠しだてせんくても、応援したるさかい、頑張りや。ほんま、羨ましいんやで? 勇者なんてかっこええやん!」
その時、リンクはくすっと笑みを溢して。
「……誇りに思いますか?」
「えっ? そりゃあ、まあ……」
ドンキーは怪訝そうに見つめる。
「いい憧れの的じゃないですか。勇者も捨てたものじゃありませんね……、じゃあ」
リンクの笑みが、不適に歪んだ。
「貴方がやればいいじゃないですか」