第四章-前編-
「……って」
ラディスははっと顔を上げた。
「ふざけんなああっ!」
――ありのまま今起こったことを話そう。
次の瞬間、俺は殴られていた。その勢いで数メートル先まで飛ばされ、床を数回引きずって転がり、がっくりと倒れ込む。
「く、クレシス……殴るのは、よくない」
「殴りたくなるような顔をするな」
クレシスはふんと鼻を鳴らす。
「確かに、お前の言う通りかもしんねえ」
ラディスはゆっくりと上体を起こして。
「でも、だから何もしないってのは絶対に認めねえ! それが、戦士(おれたち)だってのか。そんなの俺が否定してやる!」
……ああ。
俺、主人公なのに。サブキャラの方がかっこいいこと言ってる。どうしよう。
「もういっぺん殴ってやろうか」
「え、また変な顔してた?」
「いや。よからぬ声が聞こえた」
クレシスは溜め息を吐き出す。
「……お前らしいよ」