第一章
真っ先に駆け出したのはラディスだった。
強盗の男は三人。と、一番後ろを走っていた男の足下に、さっと爪先を引っ掛けて転ばせたのは桃色の髪の青年である。
転んだ男を跳び越え、そのまま走っていくラディスの背中を青年はじっと見つめて。
「退きな、ラディス!」
背後から声が聞こえて、ラディスは反射的に地面を強く蹴り、跳び上がった。
にやりと笑ったクレシスがその後ろで両腕を突き出し、指を鳴らす。その瞬間、音を立てて彼の腕を黒い電気が這い、やがて、
「――喰らいな!」
先程よりも物凄い音を立てて、稲妻が放たれた。一般市民を躱し、強盗の男を狙って襲いかかる様はさながら狼のようで。
「ぐあッ!」
真ん中を走っていた男は背中に直撃を受けてその場に崩れたが、
「ちっ、外したか」
もう一方の大金を詰め込んだ鞄を手に走っていた先頭の男は辛うじて右肩を掠めただけ、少しふらついたが立ち止まらずに。