第四章-前編-
呆然と立ち尽くすラディスの隣で、クレシスは握った拳を微かに震わせていたが。
「……姫さん、あんたは」
不意に、ぽつりと口を開いて。
「どうするつもりだよ」
ゼルダはゆっくりと顔を上げた。
その瞳は一瞬、迷いがあるかのように揺らいだが、すっと瞼を閉じ、開くと。
「私は……今までそうして生きてきた勇者や先代たちの軌跡を、踏みにじるような真似はしたくありません。だから、私は」
ゼルダははっきりと言い放つ。
「リンクを、連れ戻します」
クレシスは何か言葉を返そうと口を開いたが、やめた。はっと短く息を吐いて。
「確かに、あんたは全うな人間らしい」
そう言い捨てて、その場を離れた。
「……すみません。俺もこれで」
ラディスはそう言って頭を下げると、今しがた出ていってしまったクレシスの後を、見失わないよう、駆け足で追いかけて。
「姫様……」
傍で見ていたヨッシーが心配そうに声をかける。ゼルダはただ、黙っていた。