第四章-前編-
ゼルダは表情を曇らせて。
「彼は勇者として、それまでの生を犠牲に戦場へと赴き、剣を振るわなければならない……魔物を打ち払い、人々を守る為に」
暫しの沈黙が訪れる。
「力のトライフォースは現在、最大の敵、魔王ガノンドロフの手中にあります」
――ゲルドの王、ガノンドロフ。
魔物を率いてハイラルの地を荒らし、罪の無い人々を殺める恐ろしい男。
「魔王に残りのトライフォースを渡すわけにはいきません。その為には、彼に一刻も早く勇者としての自覚を持っていただき、戦ってもらわなければならないのです」
ラディスはじっと耳を傾けていて。
「力のトライフォースを宿した魔王に太刀打ちできるのは、同じくトライフォースを宿した私とリンクだけ……これは言わば、呪われた宿命のようなものなのです」
ゼルダはそっと瞼を閉じる。
「気の遠くなるほど昔から……ずっと」
ただひとつ。
神々のトライフォースを巡って。