第四章-前編-
「……一部というのは?」
先程のロンググローブを右手に嵌める姿を見つめながら、ラディスは訊ねる。
「私に宿ったのはこの知恵のトライフォースだけ。他には勇気と、力があります」
ゼルダは自分の右手に左手を重ねて。
「トライフォースは、その三つを手にした者の願いを何でも叶えることができるのです。それがどんなに恐ろしいことか……」
希望の為に造られた、恐怖。
人格を選ばず、手にした者の願いを何でも叶えるというのが問題なのだろう。
「私に与えられた使命は、トライフォースの悪用を企む人間を阻止すること」
ゼルダは視線を落とす。
「それはリンクも同じなのです」
ラディスは小さく目を開いた。
「……じゃあ」
「はい。彼は勇気のトライフォースを伝承し、私と共に使命を全うすべき者――」