第一章
多くの一般市民が行き交う、繁華街。
先頭のマスターは一言も発さずに人と人との間を縫ってすたすたと歩いていく。
「っと、すみません」
肩と肩がぶつかり、謝る。気を付けろよ、なんてクレシスに小突かれた、その時である。乾いた音が街中に響き渡ったのは。
「きゃああぁあ!」
各所で市民らの悲鳴が上がる。
「今の音っ」
あれは明らかに銃声だった。
フォックスとファルコが顔を見合わせたのも束の間、若い男らが人混みを掻き分けながら、拳銃を空に向け、もう一発。
「誰か! そいつら、強盗です!」
遅れて走ってくる警官は人混みに阻まれて、とても男らに追い付けそうにない。
「ちょうどいいのかもしれないな」
マスターはようやく振り返って。
「お前達なら、どうする?」