第四章-前編-
ぽたりと赤い雫が滴って、テーブルクロスに滲んだ。リンクはようやく拳を緩めて。
「見ず知らずの何かの為に、人殺しになるつもりはありません。その犠牲が百の為の一だというのなら、貴女がやればいい」
ゼルダは顔を俯かせていた。
その姿をじっと目に焼きつけた後、リンクはそこから離れて。入り口の扉へと近付くと、誰もがそこを退き、道が出来た。
「……ねえ、ラディス」
リンクが食堂を出ていった後で、リムはラディスの服の裾を引き、口を開いて。
「あたしが読む絵本ではね、王子様がお姫様を見つけて、幸せに暮らすの」
誰もが沈黙を余儀なくされていた。
「……でも、違うのね」
リムは寂しそうに視線を落とす。
「お姫様が王子様を見つけて、それでも幸せになれないなんて。まるであべこべ」
「いつだって」
サムスは続けた。
「世界はおとぎ話ほど人に優しくないわ」