第四章-前編-
「おや、否定しますか。勝手な見解で運命に縛り付け、運命だからと見放して」
「それが。違うと言うのです」
ゼルダはあくまで感情を抑えていた。
だけどそれでいて、その蒼い瞳が怒りを宿し、それがリンクに向けられているのは明らかだった。ゼルダはぐっと拳を握る。
「私は……我々一族は、貴方を正しい運命に導いて、ただ、国を……民を守る為に」
「その為の犠牲になれと?」
リンクは嘲るように言った。
「どうか、自分を悲観しないで。貴方は私たちの希望として、その運命を」
「望んでなどいなかった! ハイラルの地を脅かす魔王を討つのが宿命だなんて」
――これが、運命。
「元は人間だった彼の胸に、剣を突き立てることが正義ですか。その血を浴びて、尚正義ですか。それを勇者と謳いますか」
はっとしたのも束の間、リンクは勢いよく立ち上がり、グラスや料理を乗せた皿を力任せに両手で打ち払っていた。
硝子の割れる音が、
「――ふざけないでください!」
リンクの叫びが、食堂内に響き渡る。