第四章-前編-
あの時向けられた優しさを、俺はちゃんとこの手で掴むことが出来ただろうか。
なあ、ラディス。やっぱりお前は優しすぎる。時々、お前が手の届かないところまで行ってしまいそうで、不安になる。
分かってんのかよ。お前は、俺の――
「……なあ、キツネ」
その呼び方こそ苦笑を浮かべるものがあったが、フォックスは黙って耳を傾ける。
「俺が言えた義理じゃねえけどよ」
クレシスは静かな口調で続けた。
「あいつと、仲良くしてやってくれ」
優しい風が吹き抜けていく。
ラディスはうっすらと瞼を開き、そして閉じた。フォックスは微笑を浮かべて。
「今日は随分と優しいことを言うんだな」
「別に、ただの気まぐれだ」
「俺は口が軽いかもしれないぞ?」
するとクレシスはフォックスを横目に、
「地上に降りれると思うなよ」
沈黙。
「……冗談だよな?」
「気まぐれだと言ったはずだ」
「ごめんなさい」