第四章-前編-
「……じゃあ」
フォックスはハンドルを握って。
「昔の話さ。俺は同じ種族の中でも、極めて珍しいタイプだった。分かるだろ?」
ラディスと同じ系列の種族でありながら、黒みを帯びた稲妻を扱う……それがたまたま研究者たちの目に止まって、彼は。
「でも……そんなの、誰かが気付くはずだろ? 友達とか、それに親だって」
「まさか」
クレシスは自嘲気味に笑った。
「……親が引き渡したんだとしたら、そのお友達だって何にも言えないさ」
親に反抗して酷く嫌われていた俺は、施設に売り渡された。そこでの生活は酷いもので、逃げる術なんてのは当然なかった。
いや、諦めてたのかもな。ここから抜け出したところで、何も残ってやしない。
絶望してたんだよ。この世界そのものに。