第四章-前編-
少しの間を置いて、クレシスは口を開く。
「お前“けーわい”だよな」
「えっ」
「使い方、違ってたか?」
どうやらあまり触れていい話題でもなかったらしい。フォックスは慌てて、
「っごめん! まずかったか?」
「別に」
クレシスはくすっと笑った。
「……俺がこいつと初めに会ったのは、もう十年近く前になる。っくく、驚くなよ」
フォックスは怪訝そうに耳を傾ける。
「俺はあの時、研究施設にいたんだ」
森林都市メヌエルの都心より少し離れた場所にある、大きな森の奥深く、そこにポケモンの能力を研究する施設があった。
表向きは身寄りのない子供たちの面倒を見る養護施設、なんてことになっていたが、そんなのはもちろんでたらめだ。
実際はポケモンの能力に興味を持った人間たちが、世界の為だ何だと抜かして研究や実験を繰り返す、悲惨な施設だった。