第四章-前編-
クレシスは目を丸くした。
「どうしてもって……自分から?」
そう返すと、ラディスはこくりと頷いて。
二人は揃ってリンクを見つめた。クレシスは雨に濡れた前髪をぐいと掻き上げる。
「……将来が心配だな」
――その村の上空を覆う黒い雲を抜けると、雨は止んでいた。ラディスはフォックスの操縦するアーウィンのウィングの上に寝転び、静かに寝息を立てていて。
「寝ているのか?」
それまでラディスの髪に指で触れていたクレシスは、ふと顔を上げて手を止めた。
「……朝は早かったからな」
そう言って、コックピットをひょいと跨ぐと反対側のウィングの上に移動。
「悪いな。バランス取りづらかっただろ」
「気を遣ってくれたのか?」
クレシスは腰を下ろし、口を開く。
「……たまには、な」