第三章
「……ふふ」
その頃、カカリコ村にある物見やぐらの上で、桃色の煌びやかなドレスを纏った少女が双眼鏡から、空の彼方へと飛び去っていくアーウィンをじっと眺めていた。
「ようやく見つけたわよ」
少女はにやりと笑って双眼鏡を下ろす。
「ルイージ……!」
その少女の隣には、何故か黒いローブに身を包んだ女が立っていた。
あの時と違ってフードを被っておらず、少女と同じ金色の髪がふわりと風に靡いて。
「絶対、マリオも一緒だわ!」
「確証はあるんですか?」
「……ないけど」
少女はむすっとしていたが。
「偵察させればいいのよ! その為に貴女、あれに発信機も仕掛けたんだから!」
女は顔を俯かせて。
「……何よ。嬉しくないの? 貴女の探してた子がそこにいるかもしれないのよ?」
「分かっています、でも」
少女は怪訝そうに見つめる。
「そうまでしてあの人を、この過酷な運命に縛り付ける必要があったのか……」
女は自分の胸の前に両手を添えて。
「――逃げた鼠は取っ捕まえる!」
少女は拳を握り締める。
「それがヒゲでも勇者でも!」
すると、女は微笑を浮かべて。
「頼もしいですわね、ピーチ」
「女は度胸よ、ゼルダ」
そうして、二人はくすくすと笑い合う。
――太陽が地平線に沈み、空が藍色に染まる。星が瞬き、夜が始まろうとしていた。