第三章
「どいつに口外しようと構わねえ」
青年はラディスの後ろに回り込み、剣の先端を首筋に宛がっていた。
「が、次に会う時は口封じだ。喉を裂き、戯れ言も何も利けなくしてやる……」
青年が剣を引くと、ラディスは振り返って。しかし、そこに青年の姿はなく。
「それまでお預けだ」
静寂。青年の声は聞こえなくなっていた。
「……っはあ、息が詰まった」
「変なのに目を付けられましたねぇ」
完全に殺気が消えれば安心したのか、カービィは息を吐き出して。未だ硬直したままのラディスの元へ、ルイージが駆け寄る。
「大丈夫かい?」
「ああ」
ラディスは頷き、空を見上げて。
「また、現れるだろうね」
空はいつの間にか橙色に染まっていた。
夕暮れである。ふと現実に戻されて、空腹感を覚えた。腹時計が鳴らなかった辺り、今日の自分は一段と冴えている。
「……よし」
ラディスはぱっと振り返って。
「皆、帰ろっか」