第三章



「っ危ねえ、ラディス!」

ラディスははっと顔を上げて。

次の瞬間、目の前に大きく口を開けたヴァルバジアが現れた。鋭く尖った牙に何か冷たいものが頬を伝って、声を失う。

「ラディス!」

もう一度呼びかけられると、現実に引き戻された。ラディスは後方に跳び退いて。

ヴァルバジアが空を咬みちぎり、金属音に似た音が鳴り響く。当然のように休む間もなく、ラディスは背を向けて駆け出した。

「……よし」

立ち止まるわけにはいかない。振り向けば、ヴァルバジアは低空飛行しながら追ってきている。ラディスは小さく呟いて。


「ちっ、はえーな」

ラディスを追っているヴァルバジアの後ろで、そうぼやいたのはファルコだった。

「……頼むぜ、ラディス」
 
 
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