第三章
彼は、言ってみれば希望だった。
確かにその頃も自分は捻くれていたが、彼だけはすぐに受け入れた。知りたかったと同時に、変わりたかったんだと思う。
甘えがあってはならないと思い知らされたのは、それから遠くない出来事だった。
――仲間の裏切り。
罠にかけられ、部隊は敵の猛攻を受けることになった。それでも、敵軍を壊滅状態に追い込むことが出来たのは幸いだったが。
――駄目だ! 攻撃をするな!
驚くことに、敵軍の大将とは今まで一緒に戦ってきた仲間だったのだ。寝返ったそいつを許す術はない、そう思って剣を振りかざす自分を、あの男は必死に止めた。
――あいつは操られているだけなんだ!
かつての仲間を許そうとする彼に、顔を歪ませ、苛立ちながらも、もしかしたらそれが正しいのかもと構えを解いた。
その甘さが裏目に出るとも知らずに。