第三章



「……いつも思うんだが」

ラディスはとある疑問を口にした。

「何で、名前で呼ばないんだ?」

基本的には“あんた”と呼ばれている。

ファルコに限っては鳥だ。自分はそうでもないが、彼は気に食わないだろう。

「普通に返事するくせに」
「た、確かに」

……いや納得してどうする。

「名前なんてさ、飾りでしょ」

カービィはよっと背負い直して。

「花は綺麗ならそれでいいし、ペットは可愛いならそれでいい。そういう理屈なら、戦士だって同じだと思うんだよね」

沈黙が訪れた。

気まずいのではなく、ただ。ラディスは首に回している腕に、少しだけ力を込めて。

「……寂しいな」

小さく、そう呟いた。

「君のこと、もっと知りたいのに」
「知らなくていいよ」

カービィは目を細めて。

「……失望するだろうから」
 
 
29/85ページ
スキ