第三章
カービィは立ち上がると、岩の壁にそっと触れてもう一度空を見上げた。
「……登れるのか?」
「まさか」
カービィはラディスを見遣って、
「飛べないよ」
今まさにそれを訊ねようとしていたのだから、先読みされてラディスは口を閉じた。
「飛びにくい、ってのかな。厳密には飛べたところで届かない。適してないんだ」
直接説明はしなかったが。
その能力というのは必ずしも万能ではなくて、浮遊に適した条件(主に気流)を満たして初めて飛ぶことが出来るのだとか。
もちろん、今のこの状況だって飛べないわけではない。ただ、状態が悪く、滞空時間も限られてくるので難しいという話だ。
「……仕方ないか」
ここはあの竜があけた穴だ。入り口があるなら当然、出口もある。
「あ、ちょっと待ってくれ!」
カービィは立ち止まり、振り返って。
「……何。さっさと歩いてくれる?」
「頼みがあるんだが」
ラディスは苦笑いを浮かべた。