第一章



再び、ラディスがハッチに張り付いた。

「うわあっ!?」

青年も思わずハンドル操作を誤りそうだったが、何とか、今度は機体がほんの少し揺れて傾いただけに留まった。

短く息を吐き出し、直ぐ様機体を平行に持ち直してラディスを睨み付ける。

「だから危ないって」
「あの飛行機、追ってくれないか?」

そう言ってラディスが指差したのは、彼が乗り損ねてしまったあの飛行機である。

「え……」

青年はそう声を洩らして。

「てめえ、まさか」
「スパイとか! そうじゃなくてっ!」

男が言い切るよりも先に、ラディスは首を手を横に振って否定。青年は続けて、

「じゃあ、何で?」

ラディスは躊躇していた。

いずれは公表することになる職名だが、自分で口にするのは戦隊モノみたいで少し恥ずかしい。テレビアニメの見すぎか。
 
 
10/37ページ
スキ