第三章
食堂。着替えを終えたラディスは朝食をとりながら、向かいの席のマスターを見遣った。マスターは眼鏡を中指で押し上げて。
「何か言いたそうな顔だな」
「君が元凶なんだ、察してくれ」
マスターは短く息を吐き出す。
「理解に苦しむな。起こしてやったのに」
「他に方法があっただろ!」
腰に跨がって起こす奴があるか!
「……朝から“元気”な奴だ」
そう呟いた後に頬杖を付き、にやりと笑うマスターの憎らしいことこの上ない。
「珍しいな」
そこへ現れたのはフォックスだった。
「マスターがいるのもそうだが、お前が声を上げるなんてさ。何かあったのか?」
文句を言ってやりたいが、結局のところは寝坊した自分に対するマスターの良心である。ラディスはふいと顔を背けて。
「賢明な判断だな」
マスターはふっと笑った。