エピローグ
もう二度と。
あの場所には戻るまいと思っていたが。
天空大都市レイアーゼ。その中央に聳え立つ白い巨塔――中央司令塔。
このまま陸上部隊訓練所の教官を続けるよりはこれから新しい家族を迎えるお前にとっても遥かに良い収入になるだろうと上司に勧められた。役職は今度新しく結成する正義部隊の管理下。
詰まる所、指揮官。我ながら似合わない職を掴まされたものだ……
「よかったじゃない」
何処がだ。
「いつから?」
「……その正義部隊の歓迎式典ってのが来月の半ば行われるらしい」
配属されるのも恐らくはその日だろう。
「もうすぐじゃない」
妻は呑気に手を合わせて笑った。
「頑張ってね、クレシス」
冷たい黒髪が風に靡く。
「それにしても久しぶりね」
妻のメルティははあと溜め息をついた。
「少し心配なの」
「何がだ」
「酔っちゃうんじゃないかって」
何のことかと思えば、あれが空に浮いているからか。クレシスは眉をひそめると彼女よりも大きな溜め息をついて。
「酔うわけねえだろうが。この馬鹿」
この世界は美しい。
たくさんの物語に溢れている。
語り、そして紡がれる。
戦士達の軌跡。
……これは。
英雄であり友である男の想いを継いだ。
俺たちの始まりの物語――
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