第二章
「やあ。チームの様子はどうかね」
電話の相手は上官の男だった。
「可もなく不可もなく、とだけ」
「ふぅむ。君に任せて正解だったよ」
男はまるで我が子のようにマスターが如何に優秀かを話していたが、本人は適当に相槌を打つだけで表情一つ変えなかった。
「……ところで、隊員のデータは」
「はい。これから送信するところです」
ようやくデータの読み込みが完了し、パソコンの画面には各メンバーの戦闘能力を表す、幾つかのグラフが映し出された。
「宜しかったのですか?」
マスターは厚みのある椅子に腰掛けて。
「本名と出身地のみで」
暫しの沈黙の末、男は応えた。
「死体が歩いて帰ればいいのだがね」
結局のところ、“彼らには”必要のないデータだった。マスターは携帯を閉じると、再びパソコンの画面と向き合って。
「……、」
薄暗い部屋の中、バックライトに照らされた男の顔は。何故か不適に、うっすらと笑みを浮かべて画面を見つめるのだった――