エピローグ
「どうしたの?」
「別に。何だっていいだろ」
笑み浮かべていた表情をすっと変えて、クレイジーが冷めた口調で答える。
「単なるイメチェンってやつ」
いやに冷たい対応にルーティが訝しげに視線を遣るとその隣のマスターがにこりと笑った。何かよく分からないけど……誤魔化されたような……
「ちがうよ」
……え?
「あっこら」
「どうしてうそをつくの」
慌てるクレイジーを相手に膨れっ面。
「あさ、いってたよ」
タブーははっきり言ってのけた。
「きょうはたいせつなひなんだって」
あっ。
「父さんの命日」
ルーティは思わず呟いた。
「……覚えてたんだ」
二人はそれきり口を閉ざしてしまった。
寂しく落とした視線が何を見つめているのか見当もつかない、でも。
何となく。
……彼らも同じなのだと。
「十四年かぁ」
不意に小さく笑って吹っ切れたかのようにクレイジーが呟いた。
「もうそんなに経つんだっけ」
「周りは随分と変わってしまったな」
人の形や風景のことを指して言っているのだろうか。そういう意味なら彼らは神様なんだし周りの変化に反して自分たちが変わらないのは当然なのだから話題にするような事項でもない気がするけど――
「……お前は? 何か変わった?」
思わぬ振りにはっと顔を上げる。
「それとも相変わらず僕たちのこと殺したい? 憎んでる?」