エピローグ
「って」
ルーティは踏み込んで地面を蹴り出し、跳躍して大きく距離を離すと同時。
「追われるばかりの僕じゃないよ!」
空中で体を捻り振り返る。
途端、ぱちぱちと頬を電気が跳ねて。
「たくさん学んで――」
両手を突き出す。
「成長したんだからっ!」
次の瞬間。腕の表面を乱雑に飛び跳ねて電気が駆けたかと思うと手のひらの中心から大量の電気が放出。それは牙を剥いて向かい来る熊のすぐ真横を抜けると、その先にあった木の幹を抉り、彼方へ。
逸れたのではなく、逸らしたのだ。
「ふうっ」
驚いた熊が途端に逃げ出すのを確認してルーティは踏みとどまり、ひと息。
「……普通に歩くか」
実家まではそう遠くなかった。さっきのように確かに見知らぬ草木が生えていたり獣道が出来ていたりもしたけれど大まかなところは昔のまま。歩いていた道を逸れて右手、道の脇に立ち並んでいた草木が切り開かれた箇所を見つけるとルーティはぱっと駆け出した。
近付く。
光。飛び込んで。
「……!」
森が切り開かれた広々とした草地に茶色の屋根が印象的な一軒家がぽつり。その家の玄関へ、招くように導くようにしながら石畳みが並んでいる。
……本当に何も変わっていない。
帰ってきたんだ。僕の家に。