エピローグ
そうして懐かしそうに笑うフォックスをルーティは黙って見つめていた。
……残したいんだ。
あの人の証を。
フォックスだけじゃない、皆が。本当は何より守りたかった大切な人だから。
「見えてきたな」
エアポートまではまだ遠いが会話の切れ目にフォックスが呟いた。視線を辿らすと相変わらず緑の木々が生い茂った一つの大きな森かのような、目的地森林都市メヌエルの世界が広がっていて。
……こうして眺めていると、ここから飛び降りても木の葉がクッションとなって助けられるのではとさえ思ってしまう。無論、試さない。仮にそうだったとしてそこまでの度胸があるはずもなく。
冷静に考えて。そんなメルヘンチックな話があってたまるか。
「この分だと僕たちが先に着くね」
ルーティは遠く飛行する他のメンバーの乗った飛行機を振り返って。
「何してるかな」
「ゲームでもしてるんじゃないか」
「変な賭け事とかしてないといいけど」
ルーティは苦笑いを浮かべる。
「はは、どうかな」
人が死んだ時。
真っ先に忘れるのが声なんだって。
……ねえ。
本当にこれでいいのかな。
面影を重ねながら。
そうして過去に縋り続けることが。
彼らにとって本当に――