エピローグ
十四年前――父さんが命を懸けて守った世界。創造神マスターハンドと、破壊神クレイジーハンドが壊そうとした世界。
この世界は幸せなのだろうか。
……あの時。
本当に。皆が救われたのだろうか。
「フォックス」
ルーティはふと口を開いた。
あのさ、と切り出そうとして視線が向いたのを思わず躊躇った。一度口を閉ざし本来投げかけたかった言葉を閉じ込めてそれから、代わりの言葉を差し出す。
「父さんってどんな人だった?」
フォックスはふっと笑みを浮かべた。
「……いい奴だったよ」
周りの奴はお人好しだって言ってたけどそれでいつも誰かが救われていた。勇敢で……ああ、これもまた誰かが無鉄砲だとか言ってたっけ。
確かに危なっかしい奴だったけど本当の意味でヒーローだった。大袈裟かもしれないけどさ、皆もあいつに憧れていたんじゃなかったかな。だから……
そこまで語ってフォックスは何故か口を噤んだ。いや、何故かじゃない。
僕も分かっていた。
だから守りたかったんだよね。
……この世界よりもずっと大切な存在になっていたから。
「あれ」
沈黙から脱しようと思案していたその時あるものを見つけた。……アーウィンのハッチのガラス部分が凹んでいたのだ。
「どうしたの? これ」
洗浄した時についでで修理してもらえばよかったのに。そう思って凹んだ部分を触れながら訊ねる。
「ああ」
フォックスはふっと笑って、
「初めてラディスがこいつに乗った時、乱暴でさ。後で見たら凹んでたんだ」
「えっそうなの!?」
代わりに謝りたくなる。まさか修理代が馬鹿にならなくて今まで……
「あの時は本当にびっくりしたなぁ」