エピローグ
……揃いも揃って。
「出発しよう」
声をかけるフォックスにルーティは「うっうん!」と慌てふためきながら応えてウィングの上に座り直した。エンジンがかかり、機体が揺れる。やがてゆっくりと持ち上がり地面を離れたかと思うと。
「……発進!」
勇むかけ声と共に。
「ルーティ、大丈夫か!」
毎度毎度飛び立ったその直後ときたら強風に阻まれて目を開けられないし体も下手に動かせない。そりゃこんな危険極まりない場所に座っていれば当然というか嫌ならやめろという話になるのだが。
その内に振動も何も全てがふっと止んで軽くなる時がくる。
ゆっくりと。
瞼を開けばそこに。
「……!」
空と海の境界線がない。青く、美しい世界が視界いっぱいに広がっていた。
何処までも。
遠く。……遠く。
立ち込める暗雲に脅かされても、巨大な化け物が絶望を施しても。
それでも。幾度となく立ち向かい守ってきたこの世界が。
今日も変わらず優しく息づいて――
「レイアーゼの領空を出た。これから少しずつ降下して最終的にメヌエルのエアポートに着陸する」
フォックスが告げるのを傍耳に。
「……うん」