第一章



「すぐに降ろす。少し待ってて」
「……凄い」

青年は顔を上げて。

「えっ」
「本当に……空を……」

ラディスは瞳を爛々と輝かせながら。

「凄い……!」


面白いな、と直観で思ったのだ。

無防備で空に放り出されたようなものなのに、何一つ愕かなかったどころか、寧ろ感動し、興味を持ってくれているとは……


「……怖くないのか?」
「まさか!」

ラディスは嬉しそうな顔を向けて。

「この飛行機は、君のか?」
「あっああ……」
「アーウィンってんだよ」

口を挟んだのは、遅刻してきた青年を叱り付けていたもう一人の男である。

「ったく。オメーのドジに一般人巻き込むなよな。さっさと降ろしてこい」
「分かってるって」

繋いだ無線から聞こえてくる声に、青年は小さく笑って返す。ゆったりとした速度で、そのままハンドルを切ろうとすると。

「ストップ!」
 
 
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