プロローグ
◆プロローグ
「眠れねえのか」
音を立てないようにそっと部屋に訪れ、眠っているルーティの髪に触れようとしたが刹那、パートナーの彼に声をかけられて。
「フォックス」
窓から差し込む月の光が、その人物と首に掛けたペンダントを映し出す。
フォックスは振り向いて。
「起きていたのか」
「ちげえ。てめえが起こしたんだろ」
ウルフは体を起こすとベッドの縁に腰掛け、フォックスの首に掛けられたペンダントを見つめて。――あれは、確か。
「情けないか?」
フォックスは視線に気付くと、微笑して。
「これは誇りでもあり、戒め」
――ラディス・フォン。
「……聞かせろよ。たまには」
「長くなるぞ?」
即答か。
フォックスはウルフの隣に腰を下ろすと、ペンダントを胸に瞼を閉じて。
……遡ること、十四年前。
ラディス。お前に与えられた優しさを、俺達は一度だって忘れたことはなかった――
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