第二章
X部隊の配属が決まったと同時に亜空軍としてスカウトされ、一旦は己の受け持つチームメンバーのパンサーという男に、替え玉としてX部隊を任せたウルフ。
しかし、用事が入ったからとパンサーにドタキャンされ、掛け持ちをする羽目になった。だから機嫌が悪かった……というのが二人が初めて会った頃の裏話。
「気持ちワリィ質問だな」
友情云々に吐き気がするタイプなのだろうか。ウルフは溜め息を吐き出して。
「……別に、今はどうとも」
ウルフは夜空を見上げ、目を細める。
「あんなに嫌なはずだった。誰かが当たり前のように居てくれるその状況が」
ウルフは横目でルーティを捉えて。
「今は――」
遮るように、ルーティは突然、ウルフの体に身を預けた。直後、ウルフの狼耳が微かな寝息を拾い、ぴくんと震える。
「……ったく」
ウルフは遣り場の無い怒りに舌打ちをし、代わりに星々を睨み付けながら。
「だから餓鬼は嫌いだ」
苛立ちのあまりそう言い放ったはずのウルフの尻尾は、静かに左右に揺れていた。