第二章
「ふ……、うる、ふ……っ?」
特に鼻を強く打ってしまったお陰で、あまり上手く喋れない。が、その声は紛れもなく、ウルフのものだった。
どうやら彼も夜風に当たりに来ていたらしい。色々話したいが、今はそれよりも。
「ひ……ひひあげて、くへる?」
「手間のかかる野郎だ」
ウルフは面倒臭そうに溜め息を吐き出すと、ルーティを力強く引っ張り上げた。
「……何しに来たんだよ」
別荘の屋根の上に肩を並べて座り、夜風に吹かれて夜空を見上げていると、ふとウルフが煙草を吹かせながら、訊ねた。
何度も言うようだが、基本的に集団行動は好かないタイプの彼だ。たまたまとはいえ、せっかくの時間を邪魔してしまった。
「えっと」
何でもマイナスに考えるのはよせ、自分。
そうは自分に心の中で言い聞かせるものの、ここに来た理由が見つからない。
一応、ここでの出会いは偶然だ。だから素直に話せばいいのだが、自分から言うのはストーカーみたいで何となく気が引ける。
ま、言ってくれる人はいないのだが。