第二章
「家に帰りたい……」
「ホームシックか」
ベッドの上に横たわり、枕を抱き締めながらぼやくネスを、ウルフは鼻を鳴らして。
「そんなのじゃないよ。大体……」
ネスはちらりとウルフの背中を見遣り。
「狼って」
視線を感じ、ウルフが振り向いたと同時にネスは目を逸らして。
様々な絵本を見ていれば、狼という生き物がどれだけ恐ろしいか分かる。内心、喰われるのでは? と警戒しているのだ。
「餓鬼の発想だな」
「子供の勘が当てにならないとでも?」
ネスは体を起こすと、ベッドの縁に腰掛けて。ウルフは背中を向けたまま、胡座をかいて段ボールと向き合っている。
そこでネスは枕を傍らに置くとベッドから下り、抜き足差し足でウルフの背後へ。
息を潜め、ウルフの尻尾を鷲掴み。
「ひぎっ!?」
ウルフはその場を飛び退き、ネスを睨み付ける。ネスは目を丸くしながら。
「……大丈夫かも」
「何がだ」