エピローグ
ガコン、と。音を立てて要望の飲み物の入った缶が落ちてくれば取り出し口から迎えて。
「はいどうぞ」
この猛暑ともなれば疲労も嵩むということでルーティ達は道の途中ちょうど日陰になっていたベンチで休憩することにした。近くの自販機で購入した飲み物を手渡せば少年は柔らかく笑いかけて受け取る。
「ご親切に。ありがとう」
ルーティはにこりと笑ってベンチに座ると行き交う街の人々を眺めた。小中高問わず学生が夏休みの期間中ということもあってやはり若者や子連れの姿が目立つ。海でもなければプールでもないこの猛暑の中をよくもまあ歩き回れる気になるな、と感心しながら購入したスポーツドリンクを冷たい内にと半分まで一気に飲み干してルーティは息を吐き出した。
「そうだ! 走れ!」
この暑い中にランニングなんて気張るなあ。
「まだ買うのか?」
「当然よ」
屈強な体躯の道着の男がショートヘアの女性の買い物に付き合わされている。
「本当にこの道で合ってるんじゃろうな?」
「遠回りってだけだろうよ」
珍しい見た目。……獣人かな?
「失礼」
少年が立ち上がった。
「どうしたの?」
「この辺りに御手洗いはあるかな」
ルーティも立ち上がって辺りを見回す。
「そこの建物の中にありそうだよ」
指し示したのはどうやらアニメや漫画のグッズを扱っている比較的大きな販売店のようだった。少年を待っている間少しでも建物の中で涼みたい気持ちもあったがそう時間が掛かるはずもないだろうということでこの場待機を選択する。この猛暑の中本当に大丈夫なのかと心配されたが断った。後出しで申し訳ないがベンチの左後ろには駄菓子屋があり冷たい空気が時たま流れてくるので苦ではないのだ。
「すぐに戻るよ」
そう言って少年は小走りで離れる。ひらひらと手を振り見送った後でルーティはせっかくなので駄菓子屋の中を覗いてみようと思い立った。メヌエルに住んでいた頃は駄菓子屋にはよくお世話になったものだけど、近未来都市なんて称されるレイアーゼじゃちょっと珍しいのかもしれない……ベンチを離れて後ろ手を組みながらすぐ手前のアイスケースの中を覗いていれば。
「ひえっ! すみましぇんっ!」
……? ルーティはきょとんと顔を向ける。
「コイツ声ひっくり返ってやがるぜ!」
「ちょっとツラ貸せや。な?」