エピローグ



やり取りを終えて少年の元へ。一言二言交わし提案された裏通りに入ればこの暑さの原因たる日射しは幾らか軽減された。人の気配に驚いた野良猫がダストボックスから降りて横切れば慌てて端に避けて躱して。小さく笑った少年が空き缶をつま先で蹴って躓きそうになるのを暗いから足下気を付けてねと声掛けながら歩いていく。

「そういえば」

ルーティは思い出したように。

「答えたくなかったら答えなくていいんだけど」

少年は疑問符を浮かべる。

「目、悪いの?」

最初に心の中でぼやいたように何処に居たって目に付くこの国一番の高さを誇るあの建物がまさか目に入らないはずもない。確かに青い空を背景に見ているとあれはあれで巨大な入道雲が変異した姿なのではと勘繰ってしまう可能性もなくはないがそんな高度なボケはどんな優秀なツッコミ役も突っ込むのを躊躇うことだろう。

「いや。普段は良すぎるくらいなんだが」

少年はあっさりと答えた。

「昨晩から食事が喉を通らなくてね」

今度はルーティが頭上に疑問符。

「不測の事態だが然したる問題でもないさ」

これは……あまり触れてほしくない話題だったのかもしれない。聞けば更に詳しく答えてはくれるのだろうが逆に言ってしまえば聞かれない限り積極的に話したい話題でもないということになる。自分なりの推測でしかないがあながち間違ってもいないことだろう。

「そっか」

というわけでそれ以上触れないことにした。

「良くなるといいね」
「ご親切に。ありがとう」
 
 
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