エピローグ
……何歳だと思われてるんだ。
「さて」
少年は息をついて。
「今日は良いものを見させてもらった」
そ、そうかなぁ。
「幸先が良くて助かる。君とは是非にゆっくりと話してみたかったが生憎用事があってね」
見た目の割に大人びた喋り口調である。
「それでは」
少年は立ち去ろうとして。
「?」
振り返ってにこやかに訊ねる。
「司令塔はどちらに?」
あのでっかい塔が見えなかったのかぁ……
「じゃあ、送り届けてくるから」
一部始終を傍観していたスピカは事情を聞いた上で茶屋の近くで適当に暇潰しをしながら待機することにしたらしい。一緒に行こうよ、と誘ってはみたのだが何故か俺はいいの一点張りだった。
……人見知りだろうか。
「迷子になんなよ」
「ならないよ」
ふざけて意地悪を言う辺り何かが気に障って不貞腐れているとかでもなさそうだし。さくっと送り届けてきちゃおう。……
「……リーダー」
ルーティが少年と一緒に立ち去った後。
「よかったのですか?」
その声はスピカの影からだった。
小さく息を吐き出したスピカは敢えて裏路地へと足を運ぶ。陽の光が当たらない安全地帯となれば声の主は正体を現した。ダークウルフである。
「なぁんか苦手なんだよな……ああいう奴」
苦い表情を浮かべながら答えれば。
「自分より身長が高かったとか」
「よーしお前歯ぁ食い縛れ」
「えっ、いやっ……すみませんリーダー冗だ── ひぎゃああぁああああっ!?」