最終章



飛行機の中。離陸後こそこそと話す声は次第に静まりいつの間にか無防備な寝息に満たされて──誰も夢の世界へ誘われたのだろうとぼんやり思いながらルーティは窓の外を眺める。

蒼の孤島アクエス──規則とはいえ特殊能力を使わなかったおかげで本当の意味で羽を伸ばせたかのように感じたのはきっと自分だけじゃないと思う。寧ろこの一週間で使い方を忘れていやしないだろうか等と余計な心配をしていれば。

「あ」

小さく声を漏らして窓に張り付く。


島が──青い。

それはまるでアクアマリンのように。


「っ……」

感動とは別に込み上げてくるものがあった──きっと今これを見上げている彼らも別れの時を知っていたのだろう。目尻から零れ落ちるよりも先に手の甲で拭ってゆっくりと息を吐き出す。確かに共有したい景色ではあったけど皆が揃いも揃って眠っていたのは幸いだったのかもしれない。

「……またね」

窓に手を触れながらぽつりと呟く。


来年も再来年も。


また。

大好きな人たちと一緒に。


「、!」

座り直したと同時にぽすん、と。

眠りこけるパートナーの体が凭れ掛かる。

「ふふ」

小さく笑みを零して。起こさないように膝の上でアルバムを捲る。幸福感に表情を綻ばせる。


また日常が戻ってくる。

戦いに明け暮れる日々になったとしても。


僕たちは。

当たり前の景色を守るために。


これまでも。これからも。
 
 
 
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