最終章
最後に大きく咳払いをして。
改めて空を見上げる。
「……あーあ」
名残惜しそうな声をわざとらしく。
「一週間。あっという間だったね」
海に行って夏祭りに行って花火を見て。
せっかくの休暇に雨を降らせる意地悪なお天道様に窓越しに唇を尖らせてみたり。
秘密の大冒険をして──
「楽しかった?」
「さぁな」
「こういう時くらい真面目に答えてよっ」
ルーティが不服そうに頬を膨らませるとウルフは煙をゆっくりと長く夜空に吹き掛けた後で。
「……そうだな」
小さく笑みをこぼす。
「悪くなかった」
その瞬間──ルーティは自分の顔が分かりやすく明るい笑顔に変化するのを感じた。肩を竦めては小さく笑って見納めとばかりに夜空を見上げる。
「また来ようねっ」
「今度はちゃんと上に申請するんだな」
「わ……分かってるよ……もう……」