最終章
紺碧の空に満天の星。遠慮がちに撫でる風に靡く髪を直してパートナーをちらっと見る。
こうして別荘の屋根に肩を並べて座っているとまるで初日のようだ。あの時は酷く顔面をぶつけて次の日の海水が少しだけ沁みたっけ。思い出して失笑すると「なんだ」と声を掛けられた。
「ううん」
ルーティは首を横に振って返す。
「、煙草は?」
「別に吸ってねぇよ」
どうりで煙たくないわけだ。
「その方がいいよ」
ルーティは改めて自分の膝を抱える。
「煙草って体に悪いんだからね?」
「知ったことか」
「そりゃまあかっこいいけど」
なんて話していれば。
「あっ」
おもむろに胸ポケットから煙草を取り出し始めるのだから意地悪である。
「ちょっと──」
叱ろうと前のめりになれば。
「へっ?」
煙草の一本を目の前に差し出されて。
「ちなみに初めて吸ったのは十二の時だ」
「は、犯罪だよ!?」
「それをこの俺様に言うのか?」
ぐぬぬ。
「黙っておいてやる」
ウルフはにやりと口角を持ち上げる。
「吸ってみな」