最終章



大盛り上がりの拍手喝采。かと思えば即時マイクの争奪戦。ひとまず試練は乗り越えられたなと思いながらはいはいと苦笑混じりに譲れば直後腕を引かれるがまま群衆から連れ出されて。

「ろ、ローナ?」

これまたどうしていつの間に。歌唱中姿が見えなくなったなと思ってはいたがやっぱり抜け出していたのか。とはいえ、今度はどうしたのだろうとルーティが怪訝そうに見つめていると。

「誰かさんっ!」
「え?」
「見当たらないと思わない?」

急にそんなこと言われましても。きょとんとして軽く辺りを見回した後にはたと気付く。

「……ウルフ?」
「そうっ!」

言い当てれば腕を引いて体を反転させられた後に背中をぐいぐいと押されて。

「えっえっ?」
「呼んできてっ!」
「なな、なんで──」
「なんでもったらなんでも!」

そんなに慌てて呼ぼうとしなくてもウルフのことだから一服してるだけだろうしそれが済んだら戻ると思うけどなあ、なんて頭の中では思いつつも口には出さず素直に押されるがまま。

「わっ」

……追い出されてしまった。

「ううん」

こういうのを最近の言葉だと"もにょる"なんて言うんだっけ。せっかく今日という日は主役だというのに振り回されてるなあと小さな不満を抱きつつも気を取り直してゆっくりと歩き出す。

ウルフ、何処に行ったんだろう……?
 
 
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