第一章
「よう、浴衣はまだか?」
ルーティに頬擦りをしているフォックスを、ついてきていたファルコが引き剥がす。
「浴衣は?」
「ん、マルスに任せた」
どうやらこの二人、今し方浴衣を買って支払いはマルスに任せたらしい。
証拠に、ファルコが親指で差す方向にはマルスが。すると、懐からすっと真っ黒な一枚のカードを取り出して差し出し。
「カードで」
にこり。店員は初めて見るブラックカードに、目を点にして固まってしまっている。
「うわぁ……」
慌てふためいている店員が不憫で、ルーティは思わず苦笑。すると、フォックスが肩を組んで顔を覗き込んできて。
「ルーティはまだ決まってないんだろ?」
ぐっと親指を立て、最高の笑顔で。
「俺が決めてやるよ!」
……不安だ。