最終章



物事というのは達成する手前ともなると不思議と上手くいかなくなるものである。

例えば、曲がり角でバナナの皮に滑って転んだりどせいさんが謎に横断して邪魔をしたりシンプルに見失ったかと思えばいつの間にか一度通り過ぎた扉の中から出てきたり──追いつきそうで追いつかないむず痒い場面が続いて。そうでなくちゃ面白くないと燃え滾る人種でもないばかりにいい加減不正を問い質そうと口を開きかけたが。

「あっ」


次にリュカが飛び込んだのは──食堂。


「ええぇ……?」

まさかそこに駆け込まれてしまうものだとは思いもしなかった。入りたい確かめたいと何度も願ったはずなのにいざその展開となると躊躇いというものが。入るなと言われたわけではないのだから堂々とお邪魔すればいいのだが人は願望が叶うとなると途端その気が削がれるというか。

……ええい!

躊躇うな、いざって時は迷わず行動しろ、だ! ルーティは覚悟を決めたようにむんと口を結んでドアノブに手を掛けると思い切って押し開いた。


「……?」

暗い。何故か照明が落ちている様子。

窓にカーテンか何か掛けられているのか本当の意味で真っ暗闇ときた。何でもない場所で躓きそうになりながら一歩二歩と進み出れば不意に背後の扉が勢いよく閉まって肩を跳ねる。

「……えぇと」

肝試しでも始まるんじゃないだろうな。

「り、リュカさぁん?」

呼びかけながら足を進めれば。


ひそひそと話す声。

物陰から物陰へと移動する黒い物体。


「リュカぁ?」

いやいや勘弁してくれよと心の中で嘆きながらそれでも足だけは止めずに。きょろきょろと辺りを見回しながら進んでいれば物音がして。

「、!」


乾いた音が鳴り響いた。


「ルーティ!」
 
 
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