最終章



特殊能力を使ってはいけない。


でも。持ち前の身体能力を駆使して逃げ回ったらいけないなんてことまでは──言ってない!


「はぁっ」

流石は猿である、なんていうとまるで煽りのようだがこれでも感心しているのだ。木から木へ転々と移るのもただ飛んで跳ねるといっただけでなく太い木の枝を掴んで反動を付けて一回転しながら飛び移ったり、隣の木に移ると見せかけて即座に木の幹を力強く蹴り出してその先へ跳んだり、果てはわざと木を揺らして舞い落ちた木の葉を目眩しに使ったり兎にも角にも木の扱いというものを誰よりも理解している。

木から落としてしまえば容易いが特殊能力を使えない以上はどうすることも。身体能力には自信がある方だったが遊びとなると子どもの体力というものはどうしたものか侮れない。

「ほらほらどうしたんだよ!」

これである。ディディーはというと息のあがった様子はなくにやにやと。

「そんなんじゃ一生俺に追いつけねーぞ!」


……本当。

笑い話にもなりゃしない。


「くぅっ」

負けじとルーティも木に飛び移ろうとしたが普段体内を流れている電気を使って筋肉を伸縮させることで身体能力の底上げをしていたとだけあってその感覚が抜け切らないのでは届くものも僅かに届かない──滑り落ちそうになったところを木の枝を掴んでどうにか阻止、反動を付けてどうにか登ったまではいいがもう既にディディーの姿が見当たらないという悲しいオチ。

「こっちこっち!」

加えてそのまま逃げ遂せてしまえばよかったものをわざわざ呼ぶくらいには余裕があるのだ。このままではあまりにも埒が明かない──ルーティはきゅっと口を結ぶ。……こうなったら!
 
 
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